キスミーキスミーキスミー
明日オフだし、ウチに来ない? その言葉に素直に頷いた潤は、だけどどういうつもりか解っていたのだろう。自然に部屋でくつろいで談笑してゲームをして、その延長のように組み伏せられても、驚いた素振りは見せなかった。 「……抵抗しないんだ」 「して欲しい?」 「そういう訳じゃ、ないけど」 「ならいいじゃん」 「………そうだけど」 そうだけど。ただ。 その先は飲み込んで、潤の胸元に顔を埋めた。真っ白な肌に口接けると僅かに身を捩るけれど、それは拒絶では無く―――でも、かと言って望んでいる訳では、ないだろう。 だって。 「……ねえ、好きだよ」 行為の最中、初めて告げた言葉に、うっすらと眼を開けた潤は、荒い息をするだけで何も答えなかった。その身体を抱き締めて突き上げ、しがみついてきた首筋に歯をたてた。小さく、痛い、と聴こえた気がするけれど、無視して同じ箇所に強く吸い付いた。 初めてではなかった。ごくたまに、気紛れなように思い出したかのように誘うアイジを、潤が拒んだことも、―――誘ったことも、ない。それが不意に、ひどく切なくなった。 だって、拒絶しない潤は、求めもしない。 「潤くんが好きだよ…」 それは絞り出すような声音で。 潤が気が付いた時にはアイジは先に起きていて、ベッドサイドに座って煙草をふかしていた。 「…起きた?」 「ん…」 「まだ寝てていいよ。休みだし」 「……ん」 普段ならアイジよりも格段に寝起きがいいはずの潤だが、疲れているのだろう。再び眼を閉じて枕に顔を埋めた。アイジは煙草を揉み消すと、その隣に潜り込む。そして背中を向けた潤を抱き寄せた。 「潤くんあったかい」 「アイジ、冷えてる…」 「ごめんね、あっためて」 「勝手だな…」 眠たいのだろう、されるがままになっている潤をいいことに、髪に顔を埋めた。柔らかい感触に、何故か泣きたいような気持ちになった。 「…暗いね」 「雨だからね」 時計は午後1時を指していた。カーテンを引いているせいもあるが、部屋は夕方のように薄暗い。雨の音と時計の音だけがやけに耳についた。それを振払うかのように、潤の項に唇を寄せる。 「…アイ、」 怪訝な声に構わず、舐め上げる。びくり、と肩を竦める潤を逃さないよう、右腕でしっかりと抱き締めて、左手は身体を弄った。 「アイジ、も、無理…」 「休みだから」 「や、」 潤が逃れようと身体を捩るのを押さえ付け、強引に脚の間に手を捩じ込んだ。短い悲鳴を上げて、がくりと崩れた潤は、脱力したように力を抜いた。 「潤くん、声、聞かせて」 耳許でアイジが囁く。その首にしがみついて、潤は押し殺した声を洩らした。 「…もっと、声聞かせて」 「…アイ、も、…っ」 「もっと」 強く揺すぶるアイジにしがみついて、潤は途切れ途切れの悲鳴を上げる。でも、足りない。こんなんじゃ全然足りない。 不意に動きを止めたアイジは、貫いたままゆっくりと身体を起こして、潤の顔を覗き込んだ。潤んだ眼を見つめて、口接ける。そして懇願するように言う。 「潤潤の声聞かせて…」 「…こんな時にする、呼び方じゃないだろ…」 言葉とは裏腹の必死な声音を気付きながら、敢えて言ったのは、必死なアイジが辛かったからかもしれない。だけどアイジは首を振った。 「潤潤て呼べるのは俺だけでしょ」 「…アイジ、…」 「ね、声出して。雨の音で聞こえない」 聞こえないよ、お前の声が。 聞きたいのは。 「……潤」 「うあ……っ、アイジ……!」 上体を起こしたアイジは、強引に潤を引き上げて自分の上に座らせた。自分の体重で更に深く貫かれることになってしまい、潤は堪らず掠れた悲鳴を上げる。 「なん、で、アイ…っ」 「好き、だよ」 「アイジ…っ」 「声、聞かせて」 きっと潤は答えない。是とも否とも言わない。それが解っていて、だけど求めずにはいられなかった。声が、潤の言葉が聞きたかった。 腕の中の彼が、何を見つめているのか解らないのが、悲しかった。 雨は降り続いていて。激しくなる雨音に、アイジは耳を塞いだ。 |
end 2002.05.27
…なんかすげーアイジが可哀想な感じになっちゃった。
「ツメタイヒカリ」と似通った感じになっちゃったけど話としては別物です。けど…つ、続き書きたいわこれ…
タイトルはTHE CUREから。で、色文字はやっぱりPlasticTree“液体”。プラ唯一のエロソングです。元々はこの曲で「何かエロい」て話書きたいなーって思ってまして。
スペースシャワーTVのピエロ特番で、レコーディングでの真面目な会話の最中にアイジがものすごくナチュラルに「潤潤が」て呼んでるのを目の当たりにして…噂には聞いてたんですが、この人本当に普通にこー呼んでるのかー、と吃驚して(だって27歳男子が28歳男子にする呼び方か?)作った話。…普通その流れだと甘甘になるのかもしれんのですけど(苦笑)。
読んでくれてありがとうございました。