2003.01.23

国家と軍隊

イラク攻撃についてのアメリカ政府内の動きを見ていると、パウエルが軍人出身であるにも
かかわらず、戦争に対しては慎重で開戦には賛成ではないようにみえる。

アフガニスタン攻撃、イラク攻撃に一貫して強行論、好戦的な姿勢をしめしているのは、
ブッシュ大統領をはじめ、副大統領 リチャード ブルース チェイニー、国防長官 ドナルド 
ラムズフェルド、国家安全保障担当大統領補佐官 コンドリーザ ライス。
彼らの履歴は
チェイニーはテキサスの石油会社ハリバートン会長、 妻リン アン チェイニー夫人は、
ロッキードマーティン社重役

ラムズフェルドは 衛星、通信会社ゼネラル インスツルメント コーポレーション(GI)会長
製薬会社GDサール&カンパニー会長

コンドリーザ ライスは シェブロン重役、 スタンフォード大国際政治学教授

軍需産業最大手のロッキード マーティンとの関係、シェブロン、ハリバートンなど石油業界
と大統領のブッシュを含めて3人が関係している。

一方NeewsWeekなどでパウエルの履歴や、現在のアメリカ軍のトップの人々の言動をみると
彼らは必ずしもイラク攻撃に賛成していない。
パウエルを含めて現在のアメリカ軍を率いる人々は、ベトナム戦争当時アメリカ軍の最前線の
指揮官を経験している。彼らはその経験から「人々から支持されない戦争で兵士を死なせたく
ない」と考えているようだ。戦場で実際に殺し合いの中に立ち、自らも負傷し、死んでいく兵士
を見てきた経験、しかもその戦争が間違っていたといわれる経験。彼らは、「あの経験は二度
としたくない」と考えているそうだ。
トミー・フランクス(米中央軍司令官)は「誰よりも戦争を嫌っているのは兵士だ」と言い、
「敵と合間見えた時点で、どんな計画も吹き飛ぶ」とも言っている。

現在のアメリカ政府の好戦派がすべて戦争の実戦の経験がなく、戦争があると儲けられる
立場にいるということはなんか意味ありげだ。

しかし、兵士や司令官の一人一人の思いとは別に軍隊というのは国家の暴力装置であると
いうことは厳然たる事実だ。パウエルも戦争の決定が下されれば断固として遂行すると述べ
ている。一人一人の軍人、軍出身者の言動は意味を持たなくなる。

クリントンが1994年に出したドクトリンはいっそう独善的な意味を持っていまのブッシュ政権の
中に生きている。
「わが国の軍隊が担う第一の使命は、平和活動ではない。わが国のもっとも重要な国益を
脅かす紛争を抑止し、必要ならば戦い、勝利することである。」
ブッシュによって「わが国の国益」は捻じ曲げられ、紛争を抑止することは、紛争を作り出し
先制攻撃をすることに変えられている。

ブッシュ政権が開戦を決めたとき、アメリカ軍はその決定に忠実に従って作戦を展開するでし
ょう。しかし、彼ら指揮官のトップが世界に支持されない戦争で兵士たちを死なせたくないと
考えていることを覚えていましょう。世界中の反戦運動が、アメリカ国内の反戦運動が、作戦の
遂行や戦闘の士気に影響を与えうるのです。

さらに、ラムズフェルドは25万人規模の戦線を2正面で展開できる。(つまり、イラクと北朝鮮に
25万人づつ計50万の軍を展開できる)と言っている。しかし、その膨大な戦費はいったい誰が
負担するのか?
景気後退局面にあるアメリカは負担しきれない。当然のこととして、「アメリカのためなら何でも
いたします、ワンワン」といってる日本に請求してくるのだ。今の日本にそんな余力があります
か? 

日本は北朝鮮とも韓国、中国と連携して外交努力で解決していく努力をするべきだし、まして
やイラクとの戦争なんかに戦費は出せない、出してはいけない。はっきりアメリカに正に「NO」
というべきなのだ。

アメリカの軍が基本としている戦争論がクラウゼヴィッツであり、常にその原則立ち返ろうとする
のであれば
「戦争は盲目的な激情の行為ではなく、政治的な目的を達成するためになされるものである。
したがって、その政治的な目的が持っている価値によって、その達成のために払う犠牲の大き
さを、その量だけでなく期間についても、決めなければならない。そして、その戦力の消耗が
政治的な目的の価値を上回るとき、その目的を断念しなければならない、、」というクラウゼビッ
ツの言が思い出され、戦争回避に向かう可能性もある。
世界がアメリカのイラク攻撃を支持しないということが、まさに戦争の政治的意義の否定に
なるのだから。


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